刃物と日本人
刃物と日本人
著者/NPO法人日本エコツーリズムセンター(編)
出版社/山と渓谷社
サイズ/200ページ 17.5*11cm
発行(年月)/2016年1月
管理か、信頼か。
日常から 「刃物」 を使う機会が減っている。かつての日本では、誰もが1本の刃物を巧みに操り、暮らしにかかわるさまざまな 「もの」 や 「こと」 をつくり出してきた。道具や手指を器用に使わなければ、暮らしそのものを回していけない時代があった。世の中が便利になるにつれ、根源的な 「生きる力」 を失いつつある現代。本書は、その象徴としての刃物と人間の関係を考える。
「どうも最近の子は指が音痴になっている」 長野県のある小学校で、入学すると肥後守をひとりずつにプレゼントする取り組みをはじめた。子どもたちは鉛筆を毎日肥後守で削る。6年生が1年生の面倒を見る。学校には砥石があり、子どもたちが自ら刃を研ぐ。刃物教育をはじめて30年。成果は数値では測れないけれど、子どもが家の手伝いを率先してするようになったり、何が危ないかがわかっているから親も安心して家のことを任せられたりもする。
「どうにもならない体験とか失敗体験を繰り返していくと、だんだん判断力がついてきます。それがたぶん、たくましさとか野生感覚の取り戻しとか、生きる力とかにつながっていくんじゃないか」 キャンプ、野遊びの場で子どもたちに刃物を与え続けた団体の取り組み。3.11後、避難所の学校にあった刃物で、足りない食器を竹で自分たちで作るうちに、人々のこころがまとまり、自分たちでなんとかしようとする機運が生まれたエピソード。刃物の起源から、銃刀法の現在、教育現場での刃物、極限状態での刃物の役割など、現場からの証言が実に面白い。
「刃物」と人間の関係を問い直すことは、生きる力を取り戻すことと密接につながっている。
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