苦海浄土
苦海浄土
著者/石牟礼道子
出版社/河出書房新社
サイズ/780ページ 19.5*14cm
発行(年月)/2011年1月
人間な、なんのために、生まれてくるか
「天のくれらす魚」あふれる海が、豊かに人々を育んでいた幸福の地。しかしその地は、そして、自然や人間は、海に排出された汚染物質によって破壊し尽くされた・・・。
水俣を故郷として育ち、惨状を目の当たりにした著者・石牟礼道子は、中毒患者たちの苦しみや怒りを自らのものと預かり、「誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの」として、傑出した文学作品に結晶させた。人間とは何かを深く問う、戦後日本文学を代表する傑作。第一部「苦海浄土」、第二部「神々の村」、第三部「天の魚」の三部作すべてを収録。
「舟の上はほんによかった」
「凡庸で、名もない、ふつうのひとびとの魂が、
そのようなところへ到達する。
哲学も語らず文学や宗教も語らず、政治も語らず、
道徳などというものも語ったことのないひとびとが、
何でもなく、この世でいちばんやさしいものになって死ぬ」
「あねさん、魚は天のくれらすもんでござす。
天のくれらすもんを、ただで、わが要ると思うしことって、
その日を暮らす」
「ひとびとは、自分のものになっている歳月と共に暮らす。
だから、死もまた、自分のものになってゆっくりと、
平穏にやってくる。
ひとびとは、やさしくなっておだやかに、
おむかえの来るのを待っていたものだった」
「国ちゅうところは、どこに行けば、
俺家の国のあるじゃろか」
「春の百花というものは、
田んぼの持ち主や、山主の花ではなく、
春がくると、春はみんなのものであるように、
あきらかにみんなのものだった」
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