愉快のしるし
愉快のしるし
著者/永井宏
出版社/信陽堂
サイズ/496ページ 17*11cm
発行(年月)/2020年12月
僕らが作り出そうとしているのはコミュニケートする場所
エッセイでも詩でもない、季節のめぐり、思索のあと、日々の暮らしの中で五感を開いて拾いあつめた小さな欠片。永井宏さんの小さなことばを集めたのが、本書『愉快のしるし』です。たとえばこんな文章。
「風の強い日、丘の上で体を風に任せる。体を前傾し、手を大きく広げ、空を飛ぶ真似をしてみたり、草の中に寝そべって、風の横切っていく音を聴く。空を見上げて風を見つめる。自分の居場所がわからなくても、そうして、とにかく生きているんだってことを体で知るということが必要なときもある。」
「料理の基本はシンプルで清潔なこと。食べることの心地好さが上手く伝わることが秘訣で、もちろん、美味しく食べてくれる人も必要だけど、もっと大事なのは毎日の自分の気持ち。」
「少しずつだけど、ちょっとだけマニアックな本屋さんが増えている。個人の目で選び、その意志や心意気を本というものを通して伝えているような店で、規模が小さくても、本の持っているさまざまな目的をみんなで眺めようとしている場所でもあるような気がする。」
「箒で掃除をする。庭や玄関などではなく、床や畳。電気掃除機に慣れてしまっていると、そのゴミの詳細がわからない。なんでも吸い取ってしまうものと、掃いて寄せることでわかること。自分の生活の埃を、そんなことで知ることも、ときどきは必要かも。」
「昨年の夏、庭はエンゼル・トランペットが群生したかのように咲き乱れた。茎がどんどん太くなって、大きな花が枝々からたくさん垂れ下がる。鬱陶しくなって、枝を切ったら、今年は見つからないように他の草花の裏側でひっそり咲くようになっていた。」
これらの文章は、葉山にある「SUNSHINE+CLOUD」の通販カタログのために永井さんが書いたもの。1995年のオープン時から年に2回発行され、現在52号。そのうち1号から2011年春の33号までのすべてのテキストを永井さんが担当しました。商品説明やいわゆるコピーがある訳ではなく、海の近くで暮らす人たちのゆったりした生活感がにじむようで、時おりドキッとさせられるようなテキストが挟み込まれることもあり。永井宏さんが亡くなる直前まで書き続けたそれら「友人のような言葉」すべてを一冊にまとめました。
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<関連書籍>
『永井宏 散文集 サンライト』
『雲ができるまで』
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